昨日(10月5日)、ノーベル物理賞の発表があり、真鍋淑郎先生、ドイツのハッセルマン教授、イタリアのパリージ教授のお三方が受賞されました。
真鍋先生の受賞理由は、「地球の気候と地球温暖化の予測に関する物理モデルへの貢献」であり、大気中の二酸化炭素濃度の上昇がどのようにして地球表面の温度上昇をもたらすかを明らかにしたということが評価されたようです。
地球温暖化については、いろいろな考え方があり、依然その現象自体や原因について懐疑的な見方をする向きもあるのですが、脱炭素は既に世界的な流れであり、スエーデン王立科学アカデミーも積極的な評価をしているということですね。
一昨年ノーベル化学賞を受賞された吉野先生の受賞対象となったリチウムイオン電池も何度も充電して使用できる二次電池であることが温暖化対策として注目されていて、これも受賞理由となったようですので、温暖化関係はノーベル賞では重要な評価要素ということかもしれません。
真鍋先生が御年90歳というご高齢であり、ノーベル賞は、少なくとも受賞発表時点で生存していることが大原則で、発表時点で亡くなっていれば、どんなに偉大な功績があっても受賞対象になりませんので、言い方は悪いかもしれませんが、間に合って良かった、と心底思います。
気候物理学という、これまで日が当たらなかった分野での受賞ということで、それはとても素晴らしいことですが、真鍋先生が若くして渡米してアメリカで受賞対象となった研究を遂げ、しかも、アメリカ国籍を取得されていることを日本政府も財界も切実な問題として考えて欲しいところです。
気象関係の就職口というと、日本では非常に厳しく、真鍋先生としては、博士号をとっても就職先がないところに、真鍋先生の東大大学院での論文に注目したアメリカ気象局からオファーを受けて、渡米されたとのこと。
日本人の受賞ということで、日本人としてお目出度いというのは構いませんが、こうした基礎的、自然科学的な研究に日本は冷たく、大学院を出てすぐに渡米された真鍋先生にとっては、その研究は日本から何らかの恩恵を受けたというものではないと思います。ノーベル賞を受賞するほどの研究成果をあげながら、結局、アメリカで研究生活を続け、アメリカ国籍まで取得されたのは、日本でのオファーがなく、日本国籍を持っていることのメリットも感じられないということではないかと思われます。
これでは若い研究者にとって余りに夢がなく、日本人が受賞する都度言われる話ですが、基礎的なところにもっと目を向けて手厚い支援をしていかないと、日本の科学力は近いうちに立ち枯れてしまい、日本経済自体も先行きが暗いことになるのではないか、と危惧するところです。
以上