新型コロナウイルスの緊急事態宣言で当初対象地域とされていた東京や大阪等では早々に裁判期日の取消しがされていましたが、対象地域が全国に拡大したことを受け、先週の金曜日(17日)に、広島の裁判所でも週明けの20日からGW明けまで判決期日も含めて裁判期日の取消しの連絡がありました。
もっとも、民事事件でも緊急な処理を要する保全事件等は別で、刑事事件で被告人の身柄拘束を伴う事件や、被告人の身柄拘束を伴わなくても短期間の処理が要請される事件も別です。
特に広島地裁では、今日(20日)午後から例の事件の「百日裁判」の初公判が予定されており、これは予定どおり開かれるでしょうが(上の写真は、昼前にレーンを敷いて傍聴券を配付した後)、三密を避けるという意味では、傍聴関係で配慮する必要はあるでしょうし、マスコミや傍聴希望の方も自制的であってほしいところです。
ところで,公職選挙法は、同法違反の刑事事件について「訴訟の判決は、事件を受理した日から100日以内にこれをするように努めなければならない」としており(公職選挙法253条の2第1項)、「百日裁判」というのはこのことです。
刑事裁判は、民事裁判ほどではないにせよ、シビアな争いがある事件なら、一審だけで起訴から判決が出るまでにかなり期間がかかることがありますし、控訴審などを経て有罪判決が確定するまでで考えるともっとかかることになります。
そして、連座制のある選挙犯罪では、候補者の秘書や親族、選挙運動の実務を仕切るなどした「組織的選挙運動管理者等」の有罪判決が確定したときに、検察官が、連座制が適用されるとして候補者の当選無効等を申し立てる訴訟を提起するのですが、前提となる刑事裁判に時間がかかると、その間は議員として活動できますから、そのような期間が長く続くこと自体問題があり、後で当選無効になっても実質的に意味がなくなる場合も出てくるでしょう。
そこで、公選法は、刑事裁判受理から100日以内の判決に努めなければならないと定めたわけです。
もっとも、「努めなければならない」としていることからお分かりかと思いますが、百日以内の判決というの努力義務であり、百日を超えたら判決が出来ないというわけではありません。
しかし、実際の実務としては可及的にこれを実現するよう法曹三者が協力することを予定しており、公選法も期日のスケジュールを「第一審の初公判は裁判所が受理してから30日以内、控訴審の初公判裁判所が受理してから50日以内の日を定めること、第二回以降の公判日は初公判日の翌日から起算して7日を経過するごとに、その7日の期間ごとに1回以上となるように定めること」(公選法253条の2第2項)として、通常よりもかなり間を詰めて設けるよう具体的に要求し、「特別の事情がある場合のほかは、他の訴訟の順序にかかわらず速やかにその裁判をしなければならない」(同条3項)と規定して、他の裁判に優先して審理判決することを要請しています。
新型コロナという非常事態下ではありますが、混乱なく適切かつ迅速に裁判が行われますように。