これまで、このブログで民事裁判手続のIT化について触れてきましたように、2020年2月から、フェーズ1として、ウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の新しい運用が開始され、現在は、既に知財高裁と全国50の地裁本庁に導入されており、今年は支部にも拡大する予定で、2月上旬に島しょ部の8支部で開始し、比較的大規模な73支部は5月下旬に、残る122支部は7月下旬にそれぞれ始めることになっています。
民事裁判のIT化は、訴訟提起のオンライン化等の「e提出」、主張・証拠への随時オンラインアクセス等の「e事件管理」、民事訴訟手続の全体を通じて、当事者の一方又は双方によるウェブ会議の活用等の「e法廷」の「3つのe」を内容としますが、これまでは法改正が必要でない部分として、「e法廷」のうちのITツールを使った争点整理を前倒しでやってみたわけです。
そして、現在これがある程度馴染んできたところで、次のステップとして、今度は「e提出」のうち法改正が必要でない、準備書面等の電子ファイルでの提出を今年の2月から試行することになりました。
訴訟に関する書面のウェブ提出は米国、フランスなど各国で既に導入されています。
日本では、これまで、訴訟関係文書のうち、民事訴訟の答弁書、準備書面、書証の写し、証拠説明書などは、FAXで裁判所に送って提出することができたわけですが、いずれにしても紙ベースとなり、大部のときは大変ですし、FAXの字がつぶれて読めないことがよくあり、結局、改めてクリアなものを郵送したりする二度手間になるという面倒もありました。
最高裁が、これら従前FAXで提出できた文書をネットで提出できるシステム(通称「mints」(ミンツ))を開発し、今年の2月から甲府、大津両地裁で試行運用(5月から本格運用)を開始し、4月から知財高裁、東京地裁及び大阪地裁の一部の部でも試行運用(本格運用は今夏又は秋)するとのこと。
初めてミンツを使うときはユーザー登録が必要ですが、一旦登録すれば、他の部や裁判所でも同じアカウントで利用でき、24時間365日提出が可能となります。
ただし、当面は原告、被告双方に代理人弁護士がつく裁判での利用に限定され、手数料の納付が必要な訴状、訴えの変更申立書、控訴状、忌避申立書等は対象から外れます。更に原本の確認が必要な資格証明書、訴訟委任状等も対象から外れます。これらはFAXでも提出できない文書です。
日本の裁判のIT化は「国際標準から大幅に後れをとっている」と指摘され、やっと一部訴訟文書のウェブ提出が試行されようとしている状況ですが、まだ法改正が必要な部分が多く、これはなかなか議論があって、山あり谷ありです。
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- 「民事裁判のIT化ーいよいよ今日からフェーズ1」