今日3月8日、民事裁判のIT化に関する民事訴訟法改正法案がついに閣議決定されました。
民事裁判のIT化は、訴訟提起のオンライン化等の「e提出」、主張・証拠への随時オンラインアクセス等の「e事件管理」、民事訴訟手続の全体を通じて、当事者の一方又は双方によるウェブ会議の活用等の「e法廷」の「3つのe」を内容としますが、これまでは法改正が必要でない部分として、2020年2月から「e法廷」のうちのITツールを使った争点整理を実務的な運用という形で前倒しでやってきており、これは既に知財高裁と全国50の地裁本庁に導入され、今年は支部にも拡大することで動いています。
また、次のステップとして、今度は「e提出」のうち法改正が必要でない、準備書面等の電子ファイルでの提出を今年2月から一部で試行が始まっていますが、現行法では、当面は原告、被告双方に代理人弁護士がつく裁判での利用に限定され、手数料の納付が必要な訴状、訴えの変更申立書、控訴状、忌避申立書等は対象から外れます。更に原本の確認が必要な資格証明書、訴訟委任状等も対象から外れます。これらはFAXでも提出できない文書です。
ただ、こうした状況は、諸外国から大きく後れをとっているところであり、法改正が必要だった部分を含む改正法案がようやく閣議決定されたわけです。
この改正法案では、現在は書面に限られている裁判所への訴状等の提出について、オンラインでの提出が可能になりますし、更に弁護士などの代理人はオンラインでの提出が義務づけられます。
さらに、これも法改正が必要なものとして実務的な運用では難しかった「e事件管理」について、訴状や判決など訴訟記録は裁判所が原則として電子データで管理し、当事者など関係者はネット上で記録を閲覧し、ダウンロードを可能とすることも盛り込まれています。
このほか、改正法案には、家庭内暴力や性犯罪の被害者らが氏名や住所など個人情報を秘匿して民事裁判に臨める制度や、原・被告双方が同意すれば半年以内に審理を終わらせる新たな裁判手続を導入するための規定も入れられたとのことで、できるだけ使い勝手のよい司法制度を目指しているといえます。
政府は今国会で改正法案の成立を目指すそうです。
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