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弁護士ブログ

弁護士ブログ「緒方監督パワハラ」甲斐野正行

2019.07.25

今日(7月25日)、中国新聞にカープの緒方監督が野間選手を平手打ちにした事件が報道されていました。

カープの不振には何かあったのではないか?と思っていたのですが、まさかこれが原因ではないですよね(-_-;)。

 

今シーズンの野間選手のパフォーマンスには、正直なところ、不満が多いところです。

自分の若い頃の背番号を与え、隙あらば野間、といわれるほど、チャンスも与えてきただけに、緒方監督としても苛立ちが強かったのかも知れません。

 

ただ、今のご時世、手を出してはアウトです。

 

パワハラに関する苦情や訴訟は年々増えていますが、昨年は、女子レスリングの伊調選手問題や日大アメフト部問題等々、特にスポーツ界でのパワハラが世間を賑わせました。

体質的にパワハラが内在していると思われるスポーツ界でもついにこうした話が表に出てくるようになったわけで、時代が変わってきているといえます。

 

昨年6月に、国際労働機関(ILO)総会において、「仕事の世界における暴力とハラスメント」基準設定委員会の報告が採択され、「仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメントに終止符を打つ」として、今年6月にハラスメント全面禁止国際条約が採択されました。我が国でも、この動きを受けて、今年5月29日に、職場のハラスメント対策の強化を柱とした女性活躍・ハラスメント規制法が成立しました。

パワハラは日本だけの問題ではなく、まさにグローバルな問題でもあります。個々人の人権保護としてハラスメントが許されないのは当然ですが、国際的な商取引においても、ハラスメントへの取組がきちんとしているかどうかが重要な要素となる可能性があるということで、国全体としてこの問題に真剣に取り組む必要があります。

 

パワハラとは、

1.職場での立場の優位性を背景に

2.業務の適正範囲を超えて

3.身体的、精神的苦痛を与える、または職場環境を害すること

という定義づけがされるのですが、セクハラと違ってなかなか分かりにくいと言われます。

性的な言動で相手を不快にさせ傷つけるのがセクハラですが、性的な言動はそもそも業務上必要ではありませんから、セクハラは、性的な言動に対して、主には受け手が不快に感じるか否かにより判断されます。

これに対し、パワハラは、業務上の指導や注意のなかで行われることが多く、受けてが不快かどうかだけでは判断できません。そして、従業員等の生命身体の危険に関わる場合や、何度も同じ過ちを繰り返すような場合には、業務上の注意や指導は時としてかなり強く行わなければならない、あるいは、そうなってもやむを得ないことがあるため、業務の適正範囲かどうかの判断は難しいのです。

 

パワハラは、

①暴行・傷害を伴う場合

②脅迫・名誉棄損・侮辱に類するひどい暴言

③隔離・仲間外し・無視

④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

⑥私的なことに過度に立ち入ること

という類型化がされ、上司の言動が実際にパワハラに当たるか?は、

・その言動の内容、

・その言動が行われることとなった原因、

・その言動が行われた状況、

・そのような言動が一回的なものか継続的なものか等

を踏まえて判断されます。

 

そして、上記の④~⑥については、業務上の適正な指導・注意との線引きが必ずしも容易でない場合があるのですが、②と③については、業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるもの、つまり原則的にアウトと考えられ、更に①の暴行・傷害に至ると、業務の遂行に関するものであっても、およそ「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできない、つまり常にアウトと考えられています。

 

今回の緒方監督の行為は、①の暴行ですから、常にアウトで正当化できません(暴行自体犯罪ですから当たり前といえば当たり前です)。

 

今日の中国新聞のコラム「球炎」で山本記者は、「何をやらないかを決めること」が大事な戦略云々と書いていましたが、まさに「手だけは出さない」ことが大事なのであり、これを緒方監督向けにも書いて欲しかったですね。

 

カープ球団は、緒方監督に対しては、謝罪と厳重注意で済ませたようで、その処分の適否について中国新聞は報道していませんでしたが、他からは、処分として甘いという指摘が既にされています。

アマチュアでは、暴行事件を指導者が起こした場合、1年~2年は指導できなくなるなどの厳しい対応をしているところもあるようで、プロ球団がこのような甘い対応では困るという話を、男子バレーの川合さんがテレビでコメントしておられました。

星野監督や古葉監督の鉄拳制裁は有名な話で、マスメディアではいまだにそれらが美談的な文脈で語られることが多いのですが、それも時代の流れで変わってくる話であり、マスメディアも一考を要するところではないでしょうか。