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弁護士ブログ

弁護士ブログ「なくならないあおり運転-危険性帯有者」甲斐野正行

2019.08.21

今月10日に常磐自動車道で発生したあおり運転殴打事件が、被疑者や同乗者の言動の異常性と相俟って、連日マスコミを賑わせています。

 

あおり運転については、これまでも何度かこのブログで取り上げましたが、2017年6月5日に神奈川県大井町の東名高速道路で発生したあおり運転による痛ましい死亡事故などによって世間の批判が強くなり、厳罰化傾向にあるものの、依然としてあおり運転が後を絶ちません。

 

また、あおり運転は日本だけの問題ではないようで、テレビのニュース報道によると、中国、韓国、アメリカでも問題になっているようです。

中国では、国内の自動車数が3億台にのぼることもあって、取締りに手が回らないということですし、韓国では、取り締まる法律があっても、警察が検挙立件に動かず、国内での批判が高まっているということでした。

 

日本固有の問題ではないとすると、自動車運転時における人間の精神状態に根っこがあるかもしれず、昨今の高齢者の運転免許資格と同様、免許取得・更新においてなにがしかの配慮や工夫が必要になるかも。

 

ちなみに、現行の道路交通法でも、その辺りのことを考えての規定があるのです。

 

「危険性帯有者」というのはご存知でしょうか。

 

道路交通法103条1項は、免許取消し又は免許停止処分にできる基準として、

①幻覚を伴う精神疾患、発作による意識障害、認知症などにかかっていることが判明したとき(同項1号)、

②安全運転に支障を及ぼす身体障害が生じていることが判明したとき(同項2号)、

③アルコール、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤の中毒者(同項3号)、

④前1号~3号などの疑いがあり公安委員会から医師の診断書提出を命じられたのに従わなかったとき(同項4号)、

⑤自動車等の運転に際し、道路交通法や同法に基づく命令・処分に違反したとき(同項5号)、

⑥重大違反唆(そそのか)しなどをしたとき(同項6号)

⑦道路外致死傷をしたとき(同項7号)、

⑧前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき(同項8号)

と定めています。

 

この⑧に該当する人が「危険性帯有者」と呼ばれるのですが、都道府県公安委員会は交通違反による点数累積がなくても、免許取消し又は最長180日間の運転免許停止処分(行政処分)にすることができます。

警察庁は、(1)後方からの追い上げや幅寄せなどのあおり運転をして暴行・傷害・脅迫・器物損壊などをする者、(2)危険薬物の使用が予想される者、(3)暴走行為を反復継続する者、(4)わざと交通事故を起こして保険金をだましとる者、などを危険性帯有者に該当するとしています。

前記の東名高速でのあおり運転死亡事故や、全国であおり運転が相次いでいる実態を受けて、警察庁は2017年に、あおり運転も8号の危険性帯有者の規定を適用して積極的に取り締まるよう全国の警察へ通達したのです。

 

ですから、まだ点数があると思っていると、摘発、即免許取消しや免停もあるということを肝に銘ずるべきです。

 

ただ、これだけあおり運転が続発していることを考えると、この通達どおりに積極的な運用がされているのか?という気がしますし、仮に免停くらいで済ませているとすると、それでは甘すぎるのではないか?という声も出てくるでしょう。

行政処分だけでなく、刑罰的にも、あおり運転それ自体の厳罰化を検討すべきという声があがっています。

あおり運転それ自体への刑罰としては、道交法の安全運転義務違反等以外では、刑法上の暴行罪程度の適用が検討されているくらいですので(自動車運転死傷行為処罰法上の危険運転致死傷罪は、危険運転の結果としての致死傷の結果が生じていなければ、適用がありません。)、確かにあおり運転自体を罰する規定を整備する必要は否定できないところですね。

 

ただ、そうすると、道交法103条1項8号自体の文言は、包括的かつ曖昧なものですので、文言自体をもっと具体的かつ明確なものに改めていく必要がありますし、あおり運転罪というものを新設するとすれば、その文言も慎重に検討する必要があります。これは、今年僧衣での運転についてのブログ(本年1月9日同月28日3月8日)で触れたところと同じ問題です。