鳥取地裁では、今月6日に空調設備が故障し、ほぼ全館で冷房が使えない状態が続いているそうで、2週間以上たっても、復旧の見込みは立っていない、とのことです。
法廷には臨時で扇風機やスポットクーラーを入れて、暑さに対応しようとしているそうですが、なかなか凌ぎきれないでしょうね。
しかも、今夏は新型コロナのために鳥取地裁でも法廷ではマスク着用となっているでしょうから、尚更です。
弁護士からは、証人尋問でマスク着用が義務づけられると、声がくぐもって聞こえにくいという悩みがあり、大きな声で話さないといけませんし、そうでなくても尋問はエネルギーを使いますので、酸欠になるおそれもあります。そこに更にエアコンが効かないとなると、ますます厳しいものがあります。
裁判官ももちろんマスクをしますが、裁判官には更に別の問題があります。
あの黒い法服です。
「裁判官の制服に関する規則」1項では、「裁判官は、法廷において、制服を着用するものとする。」と定められており、法廷では法服を着ることが義務づけられています。
そして、材質は平成4年に改正される前は正絹でしたが、改正後はポリエステル100%になりました(ただし、平成4年の改正前に法服をもらっている裁判官は、改正後もそれを使用し続けることが多いので、最近まで正絹の法服を着ている方が多かったと思います。)。
ポリエステルは絹よりも汗を吸いにくいですし、実感としては、絹にしてもポリエステルにしても、暑い季節では快適なものではありませんでした。
裁判所は、年間予算の関係でエアコンを入れる時期が限定されますので、近年のように9月、10月まで暑い時期が続くようになると、それに対応するために、エアコンを入れる時期が後ろ倒しになり、6月になってもなかなか入らないことがありました。その代替として、裁判所ではクールビズの推進が早かったように思います。
法服着用の義務づけの反面として、法服の下に何を着るかについては明確に規制していないのですが、法服は胸元が開いてしまいますので、男性の場合、クールビズでノー上着、ノーネクタイだと、だらしなく見えてしまいます。欧米では、裁判のような公的場面でノーネクタイというのはおかしいという意識でしょうし、法廷の品位という意味でも、せめてネクタイは着用したいところですが、昨今の暑さでは、ネクタイをするのも苦痛であり、やせ我慢にも限界があります。
特に裁判官は、1日中法廷で裁判をすることが普通にありますので、暑い季節にエアコンなしで1日中法服を着て過ごすことは苦痛というほかないでしょう。
そもそもエアコンなどなかった昔は、法服の下は下着だけで、法壇の下に水を張ったタライを置いて、足を浸けて涼んでいた裁判官もあったやに聞いています。おおらかな時代のことで、今は許されないでしょうが、気持ちは分かります。
以 上