破産と聞いてみなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。今回は、破産に関するよくある以下の6点の誤解について解説をします。
1 年金の支給を受けられなくなる?
2 選挙権を失う?
3 日本から出られなくなる?
4 配偶者もカードを使えなくなる?
5 一生ローンを組んだりカードを作ったりできなくなる?
6 戸籍や住民票に自己破産したことが記載される?
1 年金の支給を受けられなくなる?
破産法1条では
「この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」
と規定されており、
破産法は、
債権者保護のための「財産等の適正かつ公平な清算」
債務者のための「経済生活の再生の機会の確保」
が目的となっていることがわかります。
上記の目的からすると、仮に破産をしてしまった場合に年金の支給が受けられなくなってしまうと、破産をした債務者が老後に経済的困窮に陥ってしまうことは明らかです。
そのため、破産を行ったとしても、年金支給対象から外されるということはありません。
2 選挙権を失う?
上記1で解説したとおり、破産法の目的は「財産等の適正かつ公平な清算」を行い、「経済生活の再生の機会の確保」を行うことですから、選挙権を失わせることは上記のいずれのためにもなりません。そのため、破産を行っても選挙権を失いことはありません。
なお、破産をしても選挙権は失いませんが、以下の条件に該当する場合は選挙権を失いますのでご注意ください。
・禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
・禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)
・公職にある間に犯した収賄罪により刑に処せられ、実刑期間経過後5年間(被選挙権は10年間)を経過しない者。または刑の執行猶予中の者
・選挙に関する犯罪で禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中の者
・公職選挙法等に定める選挙に関する犯罪により、選挙権、被選挙権が停止されている者
・政治資金規正法に定める犯罪により選挙権、 被選挙権が停止されている者
3 日本から出られなくなる?
自己破産の申立後に、同時廃止事件ではなく管財事件となった場合、
破産者は居住地を自由に離れることができなくなります。
※ 破産法37条第1項
「破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。」
そのため、出張や旅行など長期間居所を離れる場合には、裁判所の許可が必要になり、日本を出国する際にも同様に許可が必要になりますが、日本から出られなくなるということはありません。
さらに、裁判所からの許可に関しても、破産法37条1項が破産者の居住移転の自由(憲法22条)に対する制限であることから、破産手続に重大な支障が生じさせるおそれが高く、かつ、破産管財人から許可不相当の意見が述べられない限り申立は許可されるべきであると考えられています。(大コンメンタール破産法148頁(野口宣大))
また、上記の制限についても破産手続が終了するまでの期間のことであり、破産手続終了後は出国について制限はありません。
4 配偶者(妻・夫)もカードを使えなくなる?
自己破産を含めた債務整理を行うと、信用情報機関にその旨が登録され、所謂ブラックリストに記録がされることになります。
ただし、その際に登録される情報はあくまでも自己破産を行った本人だけであり、配偶者(妻・夫)に関する情報は登録されないため、カードが使えなくなることはありません。
そのため、配偶者のカードが使えなくなるということはありません。
5 一生ローンを組んだりカードを作ったりできなくなる?
信用情報機関に情報が登録されている期間、あるいは各金融機関が審査にあたって使用する情報に登録されている期間については、ローンやカードが作れなくなる可能性はあります。
しかしながら、信用情報機関の情報の登録期間が経過した場合や各金融機関の情報については一定の期間が経過した場合は削除されますので、一生ということはありません。
6 戸籍や住民票に自己破産したことが記載される?
戸籍や住民票に自己破産したことが記載されることはありません。
※ なお、破産者名簿には免責がされなかった場合は記載されますが、破産者名簿は公開されることはありません。