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弁護士ブログ「田村正和さん逝去 イメージのコントロール」甲斐野正行

2021.05.25

先週、俳優の田村正和さんが4月に亡くなられたと公表されました。

 

ニュースでは、「古畑任三郎」シリーズや「パパはニュースキャスター」といったコミカルな現代劇ばかりが映像として使用されていましたが、私などは、田村さんといえば、「眠狂四郎」シリーズなどの時代劇での冷たくて妖美、ある意味「人にあらざる」役柄の印象が強く、ここを踏まえないと田村さんの魅力は分からないように思います。

田村さんの代表作は、眠狂四郎シリーズや古畑任三郎シリーズなど色々あるのでしょうが、私の一押しは「乾いて候」シリーズですね。

これは、小池一夫の時代劇画を原作としたTVドラマですが、小池一夫らしいハッタリを利かせてキャラを立てた作品で、田村さんは、表は8代将軍・徳川吉宗のお毒味役、実は吉宗に捨てられた女の生んだ子という日陰者のニヒルな主人公・腕下主丞(「かいなげもんど」。この名前自体がキャラ立てのために懲りすぎ)を演じています。女と見まがうばかりの美貌だが、その身の上ゆえに常に心が乾いて候という人物で、眠狂四郎路線ではありますが、これは、田村高廣・正和・亮の三兄弟が顔を揃えた唯一?の作品かも。そのためでしょうか、お父さんの阪東妻三郎さん亡き後、歳の離れた弟たちの面倒を見てきた長兄・田村高廣さんが幸せそうに阿呆な徳川吉宗役を演じておられるのがまたほっこりとします。

CSやレンタルビデオでご覧になられる機会があれば是非。

 

田村さんは、数年前に一線から退くとのことで、以来TV等にはお出になっておらず、逝去の発表が1ヶ月遅れとなったのも、自然にフェイドアウトしようというご本人のご意向に沿ったものかと思われます。

 

プライベートをほとんどオープンにされませんでしたし、同業者の前でも物を食べる姿を見せないようにしてその形を崩そうとはされなかったとお聞きしており、「人にあらざる」ような自分のイメージをとても大事にされたのでしょう。

その意味では最期まで田村さんらしかったと思いますし、そのセルフイメージのコントロール力には感心させられます。恐らくやせ我慢の部分もあったはずですが、それこそ粋でありダンディなのです。

 

ただ、田村さんに限らず、TVや映画、スポーツ等の人気商売では、そのイメージをコントロールすることはとても大切で、CM等でイメージに大きな価値が与えられる昨今は尚更です。

出演しているCMとの関係では、イメージの保持が強く求められるのが通常であり、不倫等でイメージを損なってCM契約打切りや賠償問題、その後の本業自体にも大きくダメージを受ける方がこのところ相次いでいます。政治家も例外ではありませんし、アマスポーツ選手でも、所属団体との関係で所属契約が打ち切られ、生活や活動の場を失うこともあります。

 

昔はこんなことはなかった、女遊びは芸の肥やしとされていた、それに比べて本業と関係のない私生活の部分まで拘束する、息苦しい時代となったという見方もありますが、昔は、SNS等はなく、人の目も口も少なかったですし、そもそも俳優や芸人の社会的地位自体が極めて低く、求められる規範や生活態度が違っていたともいえる訳ですから、昔と比較しても仕方がないでしょう。昔と同じ感覚でいること自体、感性が既に鈍いといえます(まあ、これはリア充への持てない男のひがみかも知れませんが)。

 

また逆に、下手なCMに出てしまうと、自分のイメージを損なうこともあるわけで、霊感商法や詐欺的商法の会社の広告に出て、その評判を落としたり、挙げ句には被害者から損害賠償を求められたりするケースだって結構ありますから、その意味でもセルフイメージのコントロールは大事に考えるべきなのです。

 

こうしたことは芸能人や有名人たちのことで、自分たちとは関係ないと思われる方も多いでしょうが、一般人でもユーチューブ等で動画を自分で発信したり、インスタグラム等SNSを使っている人は多くなっており、その中では何らかの形でCMに関わることもあり得ますし、素人でも人気が出ると芸能人と変わらないような立ち位置に置かれることもあり得ます。一般人が自ら発信手段を持たなかった時代とは明らかに様相が異なりつつあります。

 

お勤めの方は、会社の就業規則をご覧になればお分かりと思いますが、服務規律として「会社の名誉や信用を傷つけないこと」が定められ、また、これに違反して会社の対外的信用や名誉を損なうことが懲戒事由として定められているのが通常です。業務外の私生活の部分で行ったSNSであっても、その内容が会社の信用や名誉に関わるような場合には、事実上炎上するというだけにとどまらず、会社から懲戒を受け、悪くすれば首になったりすることも現にあるわけです。

 

自ら発信手段を持つことはこれまで人類が経験してこなかったものであり、その価値は計り知れないものがある一方、影響も想像を超えたものがあるわけで、ジョークのつもりでは済まない結果が待ち受けているかも知れませんので、よくよく気をつけて。