前三回のブログで触れましたように、2018年(平成30年)7月に,相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と,法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。
今年7月1日から改正法のうち重要なものが施行され、その4つ目が今回取り上げる、「特別の寄与の制度の創設」です。
現行制度上、相続人以外の者は、被相続人の介護等に尽くしても相続財産を取得できる権利を法律上当然に保障されているわけではありません。
相続人の中で特に相続人の財産形成や介護等に貢献した場合に、「寄与分」という似た制度はあるのですが、これはあくまで相続人であることを前提として、その相続できる分を割り増しするというものです。つまり、相続人でない者には適用がないのです。
しかし、例えば、長男の妻が,長男死亡後も被相続人と同居して介護をしていた場合、被相続人の死亡に際して,相続人である長女・次男は,被相続人の介護を全くしていなかったとしても,法律上当然に相続財産を取得することができますが、他方,先に死亡していた長男の妻自身は被相続人と養子縁組でもしていない限り相続権がありませんから,どんなに被相続人の介護に尽くしても,相続財産の分配にあずかれないという不公平があります。
そこで、改正法は、このような不公平を解消するために、相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護をしたり、被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした等の場合には,相続人に対して金銭の請求をすることができる(改正民法1050条)こととしました。
ここに親族とは、被相続人の配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族をいい、子の配偶者(上記の例の長男の妻)はこれに含まれます。
そして、遺産分割の手続が過度に複雑にならないように,遺産分割は,現行法と同様,相続人だけで行うこととしつつ,相続人に対する特別寄与としての金銭請求を認めることとしたものです。
これによって、相続人でない親族も特別寄与者として相続財産の分配にあずかることができることにはなったのですが、ではどの程度なら「特別の寄与」で、その価値はいくら、というのは現行法上の寄与分においてもよく争いになるところです。
その意味では、特別寄与と認めてもらうだけの判断材料を準備しておくことが必要でしょう。
例えば、日付や金額などを詳細に、介護日記などに記録しておく、その際には、交通費やおむつ代・医療費その他の必要経費の領収書を残しておく、などは是非励行したいところですし、そうした介護等の貢献について、相続人とやりとりして情報共有し、そのための手紙・メール等も残しておくことが望ましいでしょう。