既に大企業では始まっていますが、中小企業でも今年4月1日から「同一労働同一賃金」について定めた「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「有期労働者法」)の適用が始まります。
有期労働者法では、正社員とパート・有期社員との待遇差が不合理か否かについて、個々の待遇毎にその待遇の性質・目的に照らし、適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を定め、同法10条で特に賃金についてその考慮要素を明確化しており、更に同法14条では、待遇の相違について使用者に説明義務が課されています。
そして、平成30年6月以降、最高裁で同一労働同一賃金の原則に関わる重要な5件の判決が以下のように相次いで出されています(5件と言いましたが、⑤は同じ日本郵便について東京・大阪・福岡で提起された3つの裁判について同日に出された3つの最高裁判決をまとめて1件と数えています)。
①ハマキョウレックス事件(最判平成30年6月1日・民集第72巻2号88頁)
②長澤運輸事件(最判平成30年6月1日・民集第72巻2号202頁)
③大阪医科大学事件(最判令和2年10月13日※民集等への登載は未定)
④メトロコマース事件(最判令和2年10月13日※民集等への登載は未定)
⑤日本郵便事件(最判令和2年10月15日※民集等への登載は未定)
ちなみに、上記①②の出典を示す「民集」とは、最高裁判所民事判例集の略称で、最高裁判決の中でも、先例としての価値が高く、今後に大きく影響を及ぼすと最高裁(の判例委員会)で判断されたものについては、民事事件は最高裁判所民事判例集、刑事事件は最高裁判所刑事判例集(略称は「刑集」)に登載されます。
最高裁判決でも、重要ではあるものの、先例としての価値が民集や刑集に載せるほど高くはないと考えられるものは「最高裁判所裁判集民事」(略称は「民集」と逆さまに「集民」)、「最高裁判所裁判集刑事」(略称は「集刑」)に登載されます。
こういうところで、その判決の価値や位置づけが分かりますので、裁判の中で自分に有利な判決として引用する際も、民集か集民かでは裁判所へのアピール度は違いますから、ご参考までに。
上記の①②は既に民集に登載されていますので、最高裁で先例価値が高いと考えていることが分かりますし、③~⑤はまだ出たばかりなので登載は未定ですが、その先例としての重要性からすると恐らく民集に登載されることになると予想されます。
もちろん、最高裁判決といえども、事案毎の事情に応じての判断ですので、結論部分だけを取り出して、全ての雇用関係に一律に当てはまるわけではないのですが、同じ、あるいは類似の事情の下では同じような結論に至ると予測されますので、今後の雇用のあり方についての大きな目安となります。
したがって、上記の5つの最高裁判決の分析はとても重要になる訳で、次回以降これらを整理していきたいと思います。
以 上