引き続いて改正債権法の消滅時効関係の経過措置です。
消滅時効については、期間以外に、①援用権者(改正法145条で援用権者の例示)、②時効の中断・停止(改正法147条等で、その効果に合わせて更新と完成猶予に再構成)、③完成猶予事由としての協議合意の新設(改正法151条)など改正法で大きく変更されたのですが、このうち、①は債権が施行日前に生じた場合は旧法、施行日以後に生じた場合は改正法が適用されるという原則どおりです(附則10条1項)。
ちなみに①は、旧法下の解釈を明文で例示しただけですから、どちらが適用されても実質的な違いはありません。
②は、その債権の発生時期ではなく、時効の中断・停止事由が生じた時期が施行日前か後かを基準とします(附則10条2項)。
その意味では改正法の適用範囲が広がったもので、例外的な経過措置といえます。これは、中断や停止は、その事由が生じて初めて問題になるから、当事者はこれらの事由が発生した時点における法律が適用されると予測するのが通常と考えられますし、「中断・停止」と「更新・完成猶予」という2つの制度が長期間併存すると法律関係が複雑化するためです。
③は、新たな完成猶予事由ですから、②と同様、施行日前にされても、改正法151条は適用されません(附則10条3項)。
ただし、注意すべきは、以下の2パターンです。
ⅰ 協議の申入れが施行日前にされ、施行日以後に承諾の意思表示が発信された場合
⇒このときは、協議合意が施行日後に成立することになりますので、改正法151条が適用されます。
ⅱ 協議の申入れが施行日前にされ、承諾の意思表示が施行日前に発信された場合
⇒このときは、附則29条1項が、「施行日前に契約の申込みがされた場合におけるその申込み及びこれに対する承諾については、なお従前の例による。」としており、以前見ましたように、旧法526条1項は、「隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。」としていますので、協議の合意は施行日前に成立したことになり、改正法151条は適用されません。
ややこしいですね。
次回も、もう少し、例外的な経過規定を見ていきます。
以 上